港湾労働法の全港・全職種適用に向けて

港湾労働法の全港・全職種適用に向けて
産業別闘争で雇用安定と労働条件の向上を
港全体で一致団結して実現しよう

書記長 松本耕三

港湾の規制緩和が進められている中、一企業内の労使関係だけでは港湾労働者の雇用を守り、労働条件の引き上げをはかっていくことはできません。二〇一一春闘は、日本の、世界の港湾のありようが変わっていく中で、港湾労働者の雇用安定と労働条件の引き上げのために、産業別でのたたかいを重視し、国・行政の責任を追及するために、港湾労働法の全港・全職種適用を最大の要求として取り組むこととなりました。そのためには、なによりも組合員一人一人が要求を我がものとし、たたかう体制を確立することが重要です。

一、職場に根差した要求のために
「ところで、産別、産別というけれど何ですか?」。これは若い組合員からの質問です。たしかに、役員同士や古い組合員の中では当然の言葉ですが、若い組合員にとってなじみの薄い言葉があります。
役員レベルで当たり前として使っている言葉が、実は伝わらなくなっており、「組合の要求は難しくてわからない!」などから組合離れにつながることもあります。
執行部は自分が新組合員になった気持ちで説明すること、できるだけ普段の言葉で説明することが必要です。組合員は要求やたたかう方針などの疑問点を、集会などの公式の場だけでなく個々の執行委員に聞くなどしていくことが大切です。
今日の世の中全体の変化は大きく、雇用不安になったり、労働条件がいきなり引き下がったりすることが多くあります。ですから、さまざまな制度政策要求が必要なのですが、要求は簡単なものばかりではありません。むしろ、大きなたたかいにつながるような困難な要求が多いものです。
自分の明日からの生活や将来に無関心でいる人はいません。今提案されている要求が将来のあなたの生活にとって大きな影響をもつことにもなります。他人ごとではないのです。同時に、将来を確固たるものにしていくために、要求実現のために、みんなのアイデアと理解、そして協力が必要です。

二、産別=全国港湾を軸としたたたかい
産別運動とか産別組織といわれているものは、産業別運動、産業別組織の略称です。
そもそも、労働者は一人では弱いから労働組合に団結します。そして、会社の経営者と対等に話し合いを行い労働条件の引き上げをはかります。ところが、「規制緩和」とよばれる政策のように、社会のルール、法律そのものが変えられてしまうと、いくら会社と対等な交渉をしても、会社そのものがダメになってしまうために、労働者の雇用を守ることができないのです。
港湾労働は戦後経済復興から高度成長の原動力となってきましたが、災害も多発し、長時間労働の上、休日がほとんどないような極めて劣悪な労働条件でした。そして、従来の荷役作業の形態からコンテナ荷役に変わった時、港湾労働者の雇用不安が起こりました。
このとき、港湾にはいくつかの組合がありました。それぞれ、考え方も違う組合でした。一企業、一組合だけでは、雇用も休む権利も安全も確保できません。「日曜祝日を休めるように」、「コンテナになっても雇用をまもるために」という要求で一致し、それぞれの考え方を超えて全国港湾労働組合協議会(全国港湾)にまとまったのです。一つの産業=港湾産業で、要求の一致でまとまったのです。これが産業別運動であり産業別組織です。
全国港湾は、「当たり前に休みたい、雇用不安をみんなで跳ね返したい」という要求で一致した港湾の産別組織です。

三、規制緩和反対のたたかいと失われた一〇年
規制緩和反対のたたかいは港湾産別=全国港湾をあげてたたかいました。しかし、二〇〇〇年十一月に港湾運送事業法が改悪され、規制緩和(一定部分の自由化)がされました。日本港運協会(日港協=会社団体)も規制緩和の流れの中で、二四時間三六四日(元日を除く)のフルオープンに踏み切り、産別協定(港全体の協定)重視から縦割り(企業系列)重視の運用を主張、いわゆるフルオープン協定を結びました。
しかし、規制緩和は企業間競争を激化させ大企業に有利に働く制度であり、最も弱い労働者にしわ寄せをもたらすものです。「派遣労働者」がクローズアップされた年越し派遣村など、規制緩和は大きな社会問題を引き起こしました。
港湾も例外ではなく、二〇〇〇年頃からは、中小企業は厳しい経営を余儀なくされ、労働条件は大きく下がりました。二〇一〇年春闘における、全国港湾の「失われた一〇年に対するたたかい」は、まさに規制緩和に対するたたかいです。港湾の雇用・労働条件を「とりもどすたたかい」は始まったばかりです。

四、労使の対立から一〇春闘、港湾労働法の全港・全職種適用問題
港湾労働法は、港に明かりをともした法律であり、港湾労働者の雇用と労働条件のための指針となりました。
戦後の港湾は、多くの日雇労働者によって支えられていたといっても過言ではありません。そして、日雇中心の就労体制は、他の労働者の労働条件にも影響し、港湾全体の労働条件を引き下げていました。
日雇労働者は労働条件に不満を言うことも組合をつくることもできない無権利状態におかれていました。全港湾は、日雇労働者の労働条件と権利を確保するためは、労働者を守る法律を作るしかないと判断し、港湾労働法制定闘争を取り組みました。一九六五年に港湾労働法が成立し、翌年から六大港に施行されました。
港湾労働法成立をめぐって労使は対立しました。当然ながら、港湾荷役を行う企業にとって、日雇は使い勝手がよく、法律による規制に反発しました。港湾労働法が作業の能率やコスト削減にマイナスと判断する企業は、長い間港湾労働法に反発をしてきたのです。
しかし、こうした流れは港湾の産別闘争の前進と規制緩和の中での厳しい状況で変わっていきます。
国際競争が激化する中で、船社・ユーザーによるコストダウン、港湾荷役作業の集約と淘汰、港湾政策の転換による港間競争など港運事業者にとっても極めて厳しい状況となりました。一企業だけでの生き残り策は通用しなくなりました。もちろん、大手荷主、財界による自由化の圧力は、港運業界の集約再編につながるものであり、港運業者を取り巻く状況は深刻なものとなってきました。
一方で、労使協定による職域の確保、作業体制の維持は規制緩和が進む中にあって、中小港運事業者を守る役割をはたしてきました。産業別運動による雇用保障は、事業者の倒産防止策でもありました。港湾産業での生き残りは労使共通の目的となったのです。
二〇一〇春闘で、港湾労働法の適用については「それぞれの港湾毎、職種毎に分析したうえで協議する」と確認しました。業界として港湾労働法の全港・全職種適用を決断する時期が来ているといえます。

五、港湾労働法の全港・全職種適用に向けて
港湾労働法の全港・全職種適用は、港湾労働者の雇用対策となります。港湾労働法は港湾における労働の基準であり、大きな役割を果たします。
現在の港湾労働法の内容は、六大港(現在の適用港)における対策を以下のとおりに定めています。?港湾労働者の届出、港湾労働者証の発行。?雇用と就労・福祉に関する指針「港湾雇用安定等計画」(五カ年計画)を策定し、国・都道府県、事業者、港湾労働者雇用安定センターのそれぞれの役割を決め、調査や具体策をとる。?港湾労働者派遣制度を実施する、です。
現在、六大港に限定されているこのような対策を、全港・全職種に拡大すべきです。全港・全職種適用のねらいは次のとおりです。
?全国の港湾労働者の届出と港湾労働者証の発行実施が、港湾労働者の雇用の基礎になるとともに、事業者にとっての保有基準など職域確保に有効であること。
?全国版「港湾雇用安定等計画」の策定は、港湾労働者の労働の規範を作ることであり、各県(各港湾管理者)にとっての港湾労働者の雇用と就労に関する役割を明確にするものであること。これは、港湾政策に労働条件や雇用の問題を反映せる大きな力となります。
?港湾労働者派遣制度により地方の中小港運事業者の余剰人員、または要員不足を解消すること。特に地方の小規模港の仕事の波動性に対する対策は、このような制度を確立することで可能となります。
港湾労働法の全港・全職種適用の条件の一つに、労使の合意があります。港の秩序ある発展は、既存業者の育成と既存港湾労働者の雇用確保なしにありません。そのために、港湾労働法の全港・全職種適用にむけ労使で合意して、たたかっていきましょう。