港湾労働者の雇用を脅かす港湾民営化

中央執行委員長 伊藤彰信

港湾の選別と民営化
 港湾の民営化がすすめられようとしている。
 国土交通省は、日本の港湾の国際競争力を強化するため、港湾の「選択と集中」をすすめ、民間の知恵と資金を活用した港湾経営の実現をめざしている。
 港湾の「選択と集中」については、国際コンテナ戦略港湾の選定(すでに京浜港と阪神港を選定済)、穀物(とうもろこし、大豆)、鉄鉱石、石炭の国際バルク戦略港湾の選定(年度内に選定)、新規の直轄港湾整備事業の対象となる重要港湾の絞り込み(四三港に絞り込み済)などの政策をすすめている。
 港湾の民営化については、北九州ひびきのPFI方式、博多、那覇、水島などの構造改革特区方式、三大湾のスーパー中枢港湾の埠頭運営方式、さらには指定管理者制度による業務委託、外貿埠頭公社の株式会社化などがある。今までの方式は、民間の経営視点が欠けていた、鉄道、道路、海運のフィーダー網の充実に欠けていたと国土交通省は総括している。
 民営化の方策として、港湾経営を一元的に担う港湾経営会社を設立し、民の視点による港湾の一体経営を実施しようとしている。公設民営を徹底するため、国有港湾施設の港湾管理者への管理委託義務制度を見直し、国及び港湾管理者から港湾経営会社に対して行政財産を長期一体で直接貸し付ける制度を一般化するとしている。国有港湾施設とは、岸壁など国の直轄事業で整備される施設で、ヤード敷地など港湾管理者が整備した土地と合わせて港湾経営会社に貸し付ける方式である。同時に、直轄港湾整備事業の国費負担率の引き上げや対象施設の見直し、港湾経営会社が取得した荷捌き施設などにかかる固定資産税を軽減するなどの優遇措置をおこなうことにしている。
 港湾経営会社は、スーパー中枢港湾や特区と同様に港湾法による指定、株式会社、事業協同組合を想定している。重要港湾の約三割の港で民営化を実現し、埠頭運営の一体化、二四時間化を完全に実現することを政策達成目標にしている。重要港湾の約三割といえば、四〇港弱の港が民営化されることになる。港湾民営化の話は、戦略港湾、中枢港湾の話ではなく、地方港を含んだ話なのである。

公共財の港湾を私物化
 疑問点、問題点を指摘しておこう。
 港湾経営会社の参入主体は誰なのか。港湾運送事業者が主体となるのか、港湾利用者が参入するのか、さらには投資家(外資も含めて)が参入してくるのだろうか。第三セクター方式であれば資本の五一%以上を地方自治体が持っているが、仮に港湾経営会社の民間資本比率を五一%以上にすることになれば、民間主導の経営となってしまう。日本の港を外国資本が支配することも可能である。国は大口株主保有規制を行うと言っているが、船社・荷主さらには投資家の出資比率を抑えることができるのだろうか。
 港湾経営会社の業務範囲はどこまでなのか。単にターミナルの施設管理、運営に止まらず、港湾施設全般にわたることも可能であるし、入出港管理まで業務委託することもある。港湾管理者の管理権はどうなるのだろうか。公共性を確保すると言っているが、有事の際に国が港湾を管理する権限を確保しておくというようにしか聞こえないのは思いすごしだろうか。港湾計画の作成も港湾経営会社が行うことになれば、民間経営会社が実質的な港湾管理者になってしまう。
民営化されれば港湾経営会社が港湾使用料金を決定することになるわけだが、コスト削減競争に巻き込まれれば、港湾労働者の労働条件にも影響が及ぶだろう。港湾経営会社が港湾運送事業の許可を持つことも考えられる。民営化をすすめるあまり、港湾管理者が不動産会社よろしく、地代収入、港湾使用料金を目当てに港湾経営会社の要望をなんでも受け入れる可能性があるからだ。地方自治体の財政が苦しい事情があるので心配である。

港湾管理者の雇用責任を追及しよう
 全国港湾は、認可料金制の復活、非指定港の指定港化、港湾労働法の全港全職種適用、石綿被害補償制度の確立の政治四課題を掲げて一一春闘をたたかおうとしている。港湾政策の遂行には港湾法、港湾運送事業法、港湾労働法が連携したハードとソフトの一体的運用が必要である。
 全国港湾は、北九州ひびき、那覇、名古屋飛島の問題が起きた時に、港湾管理者に対して雇用保障を申し入れ、港湾管理者とターミナルオペレーターとの協定の中に既存地元事業者の育成、雇用創出ならびに確保を確認させてきた。また、ターミナルオペレーターとの間で、雇用の安定、コンテナヤード内の仕事はすべて港湾労働者の職域であることを確認させてきた。
 港湾政策の立案にあたっては、港湾労働者との事前の協議、港湾労働対策の確立があって、はじめて立案すべきものであり、国土交通省と港湾管理者が、港湾労働者の雇用安定、適正労働条件の確保、雇用創出と雇用確保の責任を果たすべきである。この担保がない限り、港湾法改正には反対せざるをえない。
 港湾労働者の雇用と職域を守るため、地域の生活と経済を守るため、公共財、社会財としての港湾を守るため、投資家が港を私物化する港湾民営化に反対し、港湾労働者対策の確立を求めて、地域の労働者、住民と協力してたたかわなければならない。

資料
港湾経営民営化のイメージ.pdf
新規の直轄港湾整備事業(表).pdf