労働政策審議会港湾労働専門委員会

港湾労働専門委員会報告書

(全国港湾03FAX第45号(2003年12月4日))

1 はじめに

  港湾運送の波動性により効率的かつ的確に対応するための企業外労働者を活用する方策として、港湾運送事業主に雇用される常用労働者を港湾運送事業主間で活用していくための「港湾労働者派遣制度」の導入等を内容とする「港湾労働法の一部を改正する法律」(平成12年法律第72号。以下「改正法」という。)が平成12年10月1日に施行され、規制改革の影響や貨物輸送のコンテナ化等の近代的荷役の進展等に対応するための新たな港湾労働体制がスタートされたところであるが、改正法附則第4条は、「政府は、この法律の施行後3年を経過した場合において、新法の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」と規定しているところであり、平成15年10月1日にはその改正法施行後3年を経過したところである。
  また、平成13年11月29日には、港運労使間において、港湾における荷役作業の24時間364日の実施(港湾のフルオープン化)の合意がなされるなど、改正法施行後において、港湾労働を取り巻く環境に新たな変化が生じてきており、こうした新たな環境の変化も踏まえた今後の港湾労働対策のあり方を検討する必要が生じてきている。
  このため、当専門委員会としては、改正法附則第4条の規定を踏まえるとともに、改正法施行後の環境の新たな変化にも留意しつつ、改正港湾労働法(改正法による改正後の港湾労働法をいう。)の施行状況を踏まえた制度の検討等を行ってきたところであるが、その結果、今後の港湾労働対策の推進に当たっては以下のような対応を行っていくことが適当と考える。

2.港湾労働者派遣制度及び雇用秩序維持対策について

 港湾運送においては、貨物輸送のコンテナ化等近代的荷役が進展しているが、現在においても、日単位の短期の波動性は依然として存在しており、個別企業においてその雇用する常用労働者のみによって波動性を吸収することには限界があり、企業外労働力に依存せざるを得ない状況にある。
 企業外労働力として日雇労働者に依存することは、労働者の雇用の安定上問題があるだけでなく、その就労に際し、第三者が不当に介入する弊害も生ずるおそれがあることなどから、現行制度においては、港湾運送の波動性に対応した企業外労働力は、港湾労働者派遣制度に基づき派遣される他の事業主に雇用される常用労働者による労働力の需給の調整が原則とされ、港湾労働者派遣制度を利用したにもかかわらず必要な労働力を確保できない場合には公共職業安定所の紹介による日雇労働者の雇入れが認められ、さらにその適格な紹介が受けられない等の場合に限り日雇労働者の直接雇用が例外的な措置として認められているところであるが、港湾運送の現状を踏まえると、この基本的な枠組みを維持していくことが必要である。
  一方、港湾運送の波動性により効率的かつ的確に対応するための方策として新たに導入された港湾労働者派遣制度については、改正法施行以降、着実に定着してきていると言えるものの、①港湾労働法適用事業所に占める港湾労働者派遣制度の許可取得事業所の割合は、平成15年10月1日現在で28.9%にとどまっており、また、②平成14年度における港湾労働者の月平均就労延べ数全体に占める就労延べ数の割合は、港湾労働者派遣制度が全体の0.3%であるのに対し、日雇労働者は全体の1.9%を占めるなど、港湾労働者派遣制度のより一層の有効活用の促進及びそれによる港湾の雇用秩序維持の推進を図ることが必要である。
  このため、以下のような港湾労働者派遣制度の改善等を行うことが適当である。

(1)港湾労働者派遣制度の改善
   港湾労働者派遣制度については、港湾労働者の雇用の安定と港湾運送事業における効率的な経営・就労体制の確立との両立等を図るために設けられた制度であることから、派遣就業をする日数について「1人1月につき5日」と上限が設けられているところであるが、当該制度の有効活用の促進の観点から緩和を図るべきである。
   具体的には、専ら派遣を事業とする事業主及び専ら派遣就業のみに従事する労働者が生ずることのないようにする等、当該制度の趣旨を損なうことのないよう留意しつつ、関係労使の意見等を踏まえ、港湾労働者派遣制度に係る派遣期間の上限を「1人1月につき7日」に緩和すべきである。
   また、許可・届出等の港湾労働者派遣制度に係る諸々の手続きについては、その多くが当該制度の適正な運営を確保するために必要不可欠なものであると考えるが、その反面、そうした諸々の手続きの煩雑さが当該制度の許可取得を妨げる一因となっていると考えられる。
   このため、港湾労働者派遣制度の適正な運営の確保の観点に留意しつつ、当該制度に係る許可・届出等に係る手続きをできる限り簡素化すべきである。

(2)雇用秩序の維持
   港湾における雇用秩序の維持に関しては、現行の基本的な枠組みを維持しつつ、上記のような措置をとることにより、港湾労働者派遣制度をさらに有効に機能させることを通じて推進していくことを基本とすべきである。
 港湾労働者派遣制度の機能が有効に発揮されるためには、派遣先のニーズに十分対応できる労働者が派遣元から派遣されることが重要であり、それが労働安全衛生の確保にもつながるものである。
   このため、港湾労働者派遣制度に係る派遣期間の上限の緩和等に併せ、派遣先が派遣を求める際には具体的な業務の内容が分かるものとすること、及び派遣就業中の労働者の労働安全衛生の確保は派遣先もまた責任を有すること、について徹底を図ることが必要である。
 また、港湾労働者派遣制度の適正な運営の確保を図るため、港湾労働者雇用安定センター(以下「センター」という。)は港湾労働者派遣契約の締結のあっせん等を行うことととされているところであり、センターにおいては、港湾労働者派遣契約の締結のあっせんに際し、これまで以上に、港湾派遣労働者に従事させようとする業務の内容等の派遣元及び派遣先からのあっせん申し込みの内容をきめ細やかに確認するなど、その機能の充実を図ることが必要である。
   さらに、雇用秩序の維持のため、これらの措置と併せて、港湾労働者からの申告に対する迅速な対応、効果的な現場パトロール及び立入検査等を引き続き的確に実施し、違法就労の防止を図っていくことが必要である。

3.港湾労働者の雇用改善及び職業能力開発について

  平成14年8月の港湾労働者の実労働時間は1日平均8.8時間、年間換算で2,239時間(屋外労働者職種別賃金調査)となっており、平成14年の全産業における労働者の年間総実労働時間である1,825時間(毎月勤労統計調査)に比して長くなっており、平成11年と比べ113時間長くなっている。また、平成15年6月30日現在で何らかの形で週休二日制を導入している6大港の港湾運送事業所の割合は79.9%(港湾運送事業雇用実態調査)となっており、平成15年1月1日現在の全産業における何らかの週休二日制の導入割合である88.4%(就労条件総合調査)に比して導入率が少なくなっている。
  教育訓練については、平成14年7月1日から平成15年6月30日までの1年間に六大港の港湾運送事業所の61.6%が社内又は委託による教育訓練を実施した(港湾運送事業雇用実態調査)ほか、港湾職業能力開発短期大学校をはじめとする公共職業能力開発施設や港湾技能研修センターにおいて、港湾運送業務に係る職業訓練の実施や講師の派遣、施設の提供等が積極的に行われ、一定の成果を上げている。
  港湾労働者の労働条件をはじめとする雇用改善及び職業能力開発については、なお改善すべき状況にあり、また、近年、港湾のフルオープン化や荷役機械の技術革新の進展、事業協同組合等による共同受注・共同就労の増加などの港湾労働を取り巻く環境に新たな変化が見られるところであり、これらの環境の変化に的確に対応した港湾労働者の雇用改善及び職業能力開発の推進が求められている。
  このため、港湾労働者の雇用改善及び職業能力開発を促進するための施策を引き続き積極的に推進していくことが必要であり、特に、今後の施策の推進に当たっては、以下のような点に十分に留意して実施していくことが必要である。

(1)港湾のフルオープン化や共同受注・共同就労の増加等の港湾労働を取り巻く環境の変化に的確に対応した労働環境の整備
   平成15年6月30日現在で、6大港の港湾運送事業所うち、港湾のフルオープン化に伴い、平日における早朝荷役、日曜・祝日における夜間・早朝荷役が「大幅に」又は「ある程度」増加していると回答している事業所の割合は10.6%にとどまっており、交代制勤務を導入している事業所の割合も7.5%にとどまっている(いずれも港湾運送事業雇用実態調査)。
   港湾のフルオープン化の影響は、現時点においては限定的なものとなっているが、税関の執務時間外における通関体制の本格的実施が開始されるなど、今後、日曜・夜間荷役が増加することが考えられる。
   日曜・夜間荷役の増加に伴い、労働時間等の労働環境の悪化が生じることがないよう、必要な指導を行うとともに、関係者が協力して必要な福祉対策の実施に努めるほか、日曜・夜間荷役が継続的に実施される場合には、労使間の協議に基づき、交替制勤務の導入等による適切な雇用管理の実施を図り、事業協同組合等による共同受注・共同就労の増加等に対応して事業主が協力して労働安全衛生対策を講ずる等、港湾労働を取り巻く環境の変化に的確に対応した労働環境の整備を図るべきである。

(2)荷役機械の技術革新の進展や共同受注・共同就労の増加等の港湾労働を取り巻く環境の変化に的確に対応した教育訓練の推進
   近年、コンテナ輸送の増大等、港湾における輸送革新はより一層進展しているところであり、それに対応した教育訓練を積極的に実施していくことが重要である。
   このため、各種助成金の活用促進等により、事業主による技術革新の進展等に対応した教育訓練の実施を図るほか、港湾職業能力開発短期大学校をはじめとする公共職業能力開発施設及び港湾技能研修センターにおいては、荷役機械の技術革新の進展等に合わせた訓練設備の整備や現場実習の積極的な実施などにより、事業主のニーズに合った教育訓練の実施に努めることが必要である。また、共同受注・共同就労の増加に対応して事業主が協力して教育訓練を実施するなどの対応が求められる。

4.港湾労働法の適用範囲について

(1)適用対象港湾の範囲について
   港湾労働法に基づく港湾労働対策をどの港湾において実施すべきであるかについては、港湾の荷役量、港湾労働者の数等を考慮して、国民経済上に占める港湾の重要性及び必要な労働力の確保その他港湾労働者の雇用の安定等に関し、特別の措置を実施する必要性が高い港湾であるか、関係労使の合意の得られる港湾であるかといった点などを勘案して決定すべきものである。
   現行制度においては、東京港、横浜港、名古屋港、大阪港、神戸港及び関門港の6大港が適用対象港湾として指定されているところであるが、その範囲を変更することについて関係労使の合意が得られない状況にあることなどから、当面、現行どおりとし、港湾労働をめぐる諸情勢の動向や関係労使の合意形成の進展を見極めつつ、引き続き検討していくことが適当である。

(2)適用対象業種の範囲について
   港湾労働法に基づく港湾労働対策をどの業種において実施すべきかについては、事業活動に波動性が見られることや雇用秩序を確保する必要性が高いこと等港湾労働の特殊性が認められる業種であるか、関係労使の合意の得られる業種であるかといった点などを勘案して決定すべきものである。
   現行制度においては、港湾運送事業法第2条第1項第2号から第5号までの行為(「船内荷役」、「はしけ運送」、「沿岸荷役」及び「いかだ運送」)及びこれに準ずる行為であって政令で定めるもの(「船舶貨物整備」及び「倉庫荷役」)が適用対象業種とされているところであるが、その範囲を変更することについて関係労使の合意が得られない状況にあることなどから、当面、現行どおりとすることが適当である。