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港湾運送の在り方に関する懇談会

港湾運送事業の在り方に関する懇談会 報告(概要)

1.港湾運送事業の規制緩和の経緯

(1)主要9港の規制緩和
平成9年12月の行政改革委員会の最終意見、平成11年6月の運輸政策審議会答申を受けて、主要9港において事業免許制を許可制に、運賃・料金認可制を事前届出制に規制緩和すること等を内容とする港湾運送事業法の一部を改正する法律が平成12年5月17日に成立し、同年11月1日から施行された。
(2)主要9港における規制緩和後の経緯
主要9港以外(以下、「地方港」という。)の規制緩和について、「規制改革推進三か年計画(改定)」(平成14年3月29日閣議決定)において「平成14年度より検討を開始し、平成15年度に結論を得る」とされ、平成14年4月以降、地方港の実態調査、関係者ヒアリング、主要9港の規制緩和の影響調査等を行った。平成15年3月28日に閣議決定された「規制改革推進三か年計画(再改定)」において「平成15年度中に所定の結論を得て、以降速やかに措置を講ずる」とされ、これを受けて、地方港の規制緩和について一定の方向付けをすべく、同年5月16日に「港湾運送事業の在り方に関する懇談会」を設置したところである。

2.主要9港の規制緩和の評価

(1)規制緩和で期待された効果の評価
 ① 競争の促進による事業の効率化及びユーザーの需要に応じた弾力的  なサービスの提供
改正港湾運送事業法の施行状況は、平成16年2月1日現在で、新規許可15件、運賃料金届出157件等となっており、規制緩和は着実に実施されている。また、規制緩和の効果に対する船社、荷主、港湾管理者へのアンケート結果も回答者の3割から4割が、効果があったとしており、その理由として港の活性化、サービスの向上等を挙げている。
 ② 港湾運送事業者のターミナルオペレーター業への展開
平成10年度には5%程度であった公社バースへの港湾運送事業者の進出割合は、平成15年4月現在で約30%とターミナルオペレーター業への進出は着実に進んでいる。
 ③ 港湾コスト競争力の向上
40フィートコンテナ1個あたりの港湾諸料金を比較してみると、東京・神戸は、香港や、ロスアンゼルスに対しては優位であり、釜山、高雄、シンガポールとの差も縮まってきている。また、我が国の外貿コンテナ取扱量も増加傾向にある。
 ④ 事業規模の拡大及び効率化のための作業の共同化
事業協同組合・協業組合等の結成状況は、平成15年8月現在で78組合であり、うち主要9港における協同組合は36組合となっており、事業の共同化等は着実に進展している。
 ⑤ 波動性の吸収及び労働力の有効活用
波動性については、④の事業規模の拡大や作業の共同化、平成12年10月に施行された改正港湾労働法による港湾労働者派遣制度によって対処してきており、就労延日数の比較からも波動性の減少が見られる。
 ⑥ 日曜荷役及び夜間等の実施
平成13年11月29日に港運労使により、荷役作業については、1月1日を除く364日24時間実施すること等を内容とする画期的な合意がなされた。その結果、主要9港における日曜荷役等の推移をみても着実に増加するなど、波動性の解消にも貢献している。
(2)規制緩和で懸念された問題点の検証
 ① 悪質事業者の参入、日雇労働者の増加
規制緩和によって心配された「悪質事業者の参入」、「日雇労働者の増加」については、「欠格事由・罰則の強化」、「労働者保有基準の引き上げ」等の措置を講じた結果、日雇労働者依存率は減少傾向にあり、悪質事業者の参入も見られないなど、上述の措置が有効に機能したと考えられる。
 ② 労働環境の悪化
規制緩和によって心配された労働関係の不安定化、労働環境の悪化については、労働災害件数の推移、入職率と離職率の推移、労働争議による影響船舶数等から考えると、港運労使の努力によってその影響は最小限度に抑えられたものと考えられる。
 ③ 過度のダンピングによる混乱の発生
価格規制が認可制から事前届出制へ規制緩和されることによって心配された過度のダンピング(届出された運賃・料金が標準的な運賃・料金に比べて著しく原価割れした状態をいう。)については、料金変更命令制度及び緊急監査制度が導入された。
しかし、労働組合等からは、ダンピング防止の新たな方策を検討すべきとの指摘がなされている。

3.地方港の位置付け、役割及びその実態と主要9港との比較

(1)主要9港と地方港の適切な役割分担
 ① 主要9港の現状と今後の展開
主要9港は、我が国の国際海上輸送の拠点港湾であり、外貿コンテナ取扱量の約9割以上を取り扱っている。
近年のアジアの主要港の港勢の拡大によって我が国の主要港湾の相対的地位が低下するなか、我が国主要港湾のフィーダーポート化を阻止し、産業競争力を強化するためにもハブ機能の一層の強化を目的とした港湾整備、世界水準のサービス提供、コスト競争力の確保が求められている。
 ② 地方港の現状と今後の展開
地方港は、多種多様な特徴を有しているが、背後に立地する製造業と密接な関係を有していることに加え、生活物資等の輸送拠点としての役割を果たしている。地域の産業競争力の強化と地方の生活基盤の向上に資する港湾整備や港湾サービスの高度化が求められている。また、港湾の安定が地域の発展に極めて重要であり、関係者が協議、連携していく必要がある。
(2)港湾運送事業における地方港と主要9港の比較
 ① 地方港と主要9港における相違点
主要9港は、コンテナ貨物の取扱割合が高く、荷役構造もコンテナ荷役、機械荷役の割合が高いのに対し、地方港は、在来貨物の取扱割合が高く、荷役構造も在来荷役の割合が高い。
港湾運送事業者については、地方港の港湾運送事業者は主要9港に比較して、事業規模が小さく、1港あたりの事業者数も少ない。また、特定の荷主、船社への依存率が高い。
 ② 地方港と主要9港における共通点
地方港と主要9港の共通点としては、港湾の安定化、悪質事業者の排除、港湾運送事業者の体力強化等の必要性が存在する。

4.地方港の規制緩和の実施

 港湾運送事業については、過去に混乱の歴史を経験したという事実に鑑み、段階的に規制緩和を進めることとされ、平成12年11月より主要9港について規制緩和を実施したが、大きな混乱もなく推移している。平成14年3月及び平成15年3月に「地方港についても主要9港同様、規制緩和を実施する」旨、閣議決定されるとともに、他事業においても規制緩和が進んだ結果、物流の世界において免許制は、地方港の港湾運送事業のみとなっている。地域の活性化・産業競争力の強化のため、港湾の活性化を図ることが重要であり、そのためには、地方港においても主要9港同様、事業免許制を許可制に(需給調整規制の廃止)、運賃・料金の認可制を事前届出制にすることを内容とする規制緩和を実施すべきである。

5.港湾運送の安定化策

(1)地方港の規制緩和にあたって講ずべき措置に関する基本的考え方
地方港の規制緩和にあたっては、主要9港の規制緩和の評価、地方港の役割や実態、主要9港との比較等を踏まえ、労働関係等港湾運送の安定化に一定の配慮を払いながら規制緩和を進めていくことが重要である。そのため、主要9港における規制緩和に際に講じた、①悪質事業者の参入防止策として欠格事由の拡充及び罰則の強化、労働者保有基準の引き上げ、一貫責任制度の維持、②過度のダンピング対策として料金変更命令制度、緊急監査制度の創設、③港湾の安定化のための拠出金の確保等の港湾運送の安定化策の大部分については、同様の措置を講ずる必要がある。
また、免許制から許可制に規制緩和することに伴い、検数・鑑定・検量事業や、港湾運送事業法の適用対象港の考え方についても所要の見直しを実施すべきである。
(2)港湾運送事業の安定化策
 ① 悪質な事業者の参入防止策
主要9港の規制緩和時と同様、欠格事由の拡充、罰則の強化、一貫責任制度の維持を講ずべきである。
労働者保有基準の引き上げについては、主要9港同様、原則1.5倍程度に引き上げるべきであるが、地方港の特徴を考慮し、1港に4社以上の港湾運送事業者が存在しない場合には、都道府県単位等、港を超えた事業協同組合の設立を認め、みなし労働者に関する特例を適用するべきである。当該特例を適用しても1.5倍を満たすことが困難な場合には、別途検討すべきである。また、1.5倍の新基準摘要の猶予期間についても、主要9港の規制緩和の際の猶予期間(1年7ヶ月)以上の期間を設けるべきである。
 ② 過度のダンピングによる港湾運送の混乱の防止策
主要9港の規制緩和の際に導入した、料金変更命令制度及び緊急監査制度を地方港においても措置すべきである。
また、港湾運送事業者と荷主、船社とが対等の関係を築くことができるよう、独占禁止法、平成15年6月に成立した改正下請法、公正取引委員会において検討が進められている独占禁止法に基づく特殊指定に関し、関係省庁とも連携しつつ、積極的に協力し、これらの周知徹底を通じて、その適正な発動が図られるよう努力すべきである。
 ③ 港湾安定化協議会(仮称)の設置
規制緩和に伴う、港湾運送の秩序維持、労働関係の安定化、当該港湾の整備の方向等について、地区港運協会単位をベースに地区港運協会、労働組合、行政、港湾管理者等の港湾運送の関係者による意見交換の場として「港湾安定化協議会(仮称)」を設置すべきである。また、協議会全般のあり方等を検討するために中央レベルでの協議会も必要に応じ開催すべきである。
なお、当該協議会は、港湾の発展、安定のための関係者の意見交換の場であることから、賃金交渉等の労使に関する事項や行政権の行使に関する問題を取り扱うことは適当ではない。
(3)拠出金の確保
 ① 拠出金の経緯
拠出金は、港湾労働者の福利厚生の充実のために使われており、労働関係の安定化に極めて重要であり、国としても船社、荷主の理解と協力を得て、認可料金制度のもと拠出金を適正なコストとして認めてきた。
 ② 主要9港の規制緩和による分割納入方式の導入
主要9港において、料金制度が認可制から事前届出制へと規制緩和した際、認可料金で裏打ちしていた拠出金が根拠を失い、確保されなくなる懸念から船社、荷主の理解と協力のもと、拠出金の分割支払方式を導入した。
 ③ 地方港の規制緩和後の拠出金制度の維持及び支払方法
地方港の規制緩和を行う場合、主要9港同様、分割支払方式を導入するのが素直な考え方であるが、地方港では主要9港に比べて、港湾運送事業者及び船社、荷主の規模が小さいことから分割支払の実施は負担が大きいことや地方港の拠出金の徴収コストが主要9港に比べ高く、費用対効果の点等から一括支払方式を継続することが適当である。
 ④ 地方港規制緩和後の主要9港における拠出金の支払方式
分割支払方式を導入した主要9港については、分割支払方式が定着しており、今これを一括支払方式へ変更することは、港湾運送事業者及び船社、荷主に更なる負担を強いる可能性があること等から、当面、引き続き分割支払方式を継続すべきである。
(4)検数・鑑定・検量事業
 ① 検数・鑑定・検量事業の現状及び将来の展望
検数・鑑定・検量事業(以下「検数事業等」という。)は、海上貿易を円滑に行うために不可欠であり、世界的に認知されている重要な業務である。事業量的には減少傾向にあるが、輸送の安全管理、セキュリティの確保、IT化等新たなニーズへの対応が求められており、公益的な役割を維持するためにも今後とも行政の関与が必要である。
 ② 需給調整規制の取扱い
現在、検数事業等は免許制であるが、港湾荷役事業等と異なり、免許の単位が全国単位であり、施設、労働者の保有基準が設定されていないこと等から、実態的には許可制に近いものである。また、地方港の規制緩和によって、港湾荷役事業等が免許制から許可制へ変更する場合、検数事業等のみ免許制にしておく理由も乏しい。
地方港の規制緩和にあわせ、検数事業等についても免許制から許可制へ、料金認可制についても事前届出制へ規制緩和すべきである。
 ③ 検数人・鑑定人・検量人の登録制の廃止
現在、検数人・鑑定人・検量人(以下「検数人等」という。)については、国による登録制度が実施されているが、年齢や過去の法違反の有無が要件となっているにすぎず、検数人等の教育や技術レベルは雇用主に依存している。
検数人等の質の確保は事業者に対する事業計画等の審査を通じて担保し、検数人等の登録制度を廃止すべきである。
 ④ 検数等事業の規制緩和に伴い講ずべき措置
規制緩和によって、我が国の検数等の国際的な信用を失墜させるような質の低い事業者等の参入を防止し、安易な「開業・廃業」を防止する観点から、検数等事業の許可基準として、規模や経営的基盤に関する基準を設けるとともに、検数人等に対する教育訓練等の計画や検数人等の名簿を事業計画の記載事項とすべきである。
(5)港湾運送事業法適用対象港
 ① これまでの法適用対象港の考え方
現在、免許制のもと、当該港における事業者の育成と秩序の安定化を図るという観点から法適用対象港(以下「指定港」という。)を決定してきたが、営業の自由を制限する等の要素もあることから、指定港の拡大には慎重を期してきたところである。
 ② 規制緩和に伴う法適用対象港の考え方
地方港においても事業参入を免許制から許可制へ規制緩和することに伴い、指定港の見直しを検討する場合には、単に取扱貨物量の多寡だけではなく、周辺の港湾への影響、港湾整備計画等を総合的に勘案して判断すべきである。
(7)引受義務の廃止等規定の整備
地方港も含め事業参入を免許制から許可制へに変更することに伴い、免許制のもとで排他的営業権を得ていた事業者に対し、付随する義務として課してきた「引受義務」を廃止すべきである。
その際、生活物資の輸送など公共性の確保に十分配慮する必要があり、公益命令や事業改善命令の要件等について検討を行う必要がある。
6.規制緩和のスケジュール
最終報告後、改正法案の作成作業を行い、平成16年度中に改正法案を国会へ提出するべきである。

改正法案の施行時期については、地方港の特殊性を踏まえ、規制緩和の準備期間として、十分な時間的余裕を確保すべきである。